グラフィックデザイナーとWebデザイナー、いったいどちらを目指したらいいの?
こんな疑問にお応えします。
実は今、グラフィックデザイン業界も大きな節目を迎えています。
これから「デザイナー」を目指したい方はこの流れをキャッチして、
後悔のない選択をしていきましょう。
老舗デザイン事務所と広告制作会社でグラフィックデザインをやってきた経験と、
現在フリーランスでWebデザインとグラフィックデザイン両方の仕事をしている立場から詳しく解説します。
こんにちは!デザイナー歴14年、フリーランス6年目のマムです。現在、小学生を子育てしながら在宅でグラフィックデザインとwebデザインのお仕事をしてます。
「グラフィックデザイナーやめとけ」が一理ある数字が示す理由
グラフィックデザインに欠かせない「印刷物」が激減
グラフィックデザインの歴史は「印刷の歴史」ともいえるくらい、
グラフィックデザインと印刷は切っても切れない関係です。
たとえばポスターやチラシ、パンフレットや名刺などは印刷されて完了ですよね。
ところが時代の流れはペーパレスへ。
紙の「印刷物」を無くしていく方向へと進んでいます。
これまで大形ショッピングセンターに置いてあったフロア案内のパンフレットも姿を消しました。
私も実際に仕事をしていて、とりわけ2023年は「ここまで来たか」というくらい、一気に電子化が進んだ手応えがあります。
それもそのはず、JAGAT(公益社団法人日本印刷技術協会)の以下のデータに納得の答えがありました。
JAGATの会員企業で実施した「印刷物を作る気があるかないか」の調査です。
グラフの一番最後を見てください。
2022年は「縮小:印刷する気ない」が「強化:印刷する気ある」を抜いて21.5%の最高値に。
つまり「印刷物を作らない」傾向が加速しはじめたのです。
これによって多くのグラフィックデザイナーの仕事内容が確実に変わります。
このことが「やめとけ」と言われる理由の一つであることは、まず間違いありません。
印刷会社の大手「凸版印刷」から「印刷」の文字が消えた
テレビCMでご存知の方も多いと思いますが、印刷の大手「凸版印刷」が「印刷」の文字を外して「TOPPAN」に社名変更しました。
印刷をやらなくなったわけではありませんが、今後は印刷以外のことにも注力する姿勢を示したというわけです。
印刷会社はグラフィックデザイナーにとって「仕事の戦友」ともいえる一番身近な存在ですから、
こうした印刷業界の動きは、グラフィックデザイン業界にも大きな変化が起きていることを示していると言えるのです。
グラフィックデザイナーの仕事内容は激変
ではグラフィックデザイナーの仕事はどう変わっているのでしょうか。
具体的な内容が気になるところですが、、
まず従来のグラフィックデザイナーの仕事内容から順にご説明します。
従来のグラフィックデザイナーは「職人的」
グラフィックデザイナーには「デザインすること」とほぼ同じボリュームで「印刷の知識」が必要です。
「デザイン:100%、印刷の知識:90%」のイメージです。(個人のイメージ)
なぜならグラフィックデザインは印刷されてはじめて「完成」なので、
印刷されたあとの状態を想定しながらデザインを進める必要があるからです。
ですから新人のグラフィックデザイナーは、デザインスキルを高めていくのは当然のこと、
平行して「印刷の知識」も積み上げていく必要があります。
ところがこれの何が大変かというと、実際に仕事をしてみないと積み上がらないという点です。
例えばデザインしたものを印刷してみると、紙質や隣り合う色によって「色が転ぶ(色みが違う)」ことがよくあります。
グラフィックデザイナーはこれを防ぐために、これまでの経験値を総動員して「色の転び」も計算に入れながらデザインしなければなりません。
印刷段階での修正やミスは、納期の遅れや損失につながるからだよ
経験の浅いデザイナーは、ベテランのデザイナーや印刷会社の方にも助言をもらいながら経験値を増やしていきます。
このようにグラフィックデザイナーには「経験による職人的な積み上げ」がどうしても必要なのです。
(※ネット上で「大変だからやめとけ」と言われる理由の「根本」はここにあります)
今後のグラフィックデザイナーはデジタルスキルとのかけあわせが必須
これまで印刷していたのに、突然印刷が不要になったグラフィックデザインはどうなるかというと、
仕事自体がなくなることも当然ありますが、
代わりに「画像」としてWebサイトに掲載されることが多いです。
ただしこれは「その場しのぎ」の処置でしかありません。
本来「紙媒体」と「Web媒体」の役割は全く違うので、
もともと「印刷用」だったグラフィックデザインをそのままWebサイトに掲載しても「見にくい・使いにくい」という事態が多々起こります。
そのため今後は、Web掲載を前提としたグラフィックデザインに変えていく必要があります。
例えば、先ほど例にあげた大型ショッピングモールのフロア案内が良い例です。
QRコードを読み取って、自分の端末上でフロアマップを表示して、目的のお店を探したことがある方も多いかと思います。
でもマップが大き過ぎて、手元の小さな端末では「どうにも探しにくい」という経験をされた方も多いのではないでしょうか。
このように「印刷物としてのグラフィックデザイン」をそのままWeb上に移動しただけでは、
ユーザーにとって非常に使いにくいものになってしまうんです。
ですからこれからはこの不具合を解消するようなグラフィックデザインが必要です。
つまり、グラフィックデザイナーにも「デジタルに関するスキルと知識」が求められてくるというわけです。
かと言って「印刷物」のグラフィックデザインが無くなるわけではない
いくらデジタル化が進んでも「印刷物」をデザインするグラフィックデザインが完全に無くなるわけではありません。
先ほども言ったように「紙」と「デジタル」では目的が全然違うからです。
プロダクト(商品)には何かしらのパッケージングが必要ですし、
手にとった「風合い」を求めるニーズはいつの時代にもあります。
ただしそのような仕事に携われるのは、
一部の「経験豊富」な「デザインの実力」も兼ね備えたグラフィックデザイナーに限られてきます。
というか、、
実はこれ、今までも同じなんです^^;
その点は今までもこれからも変わらないということです。
ただ、そんなグラフィックデザイナーやグラフィックデザインの事務所や会社でさえも、
「印刷物」だけを対象にしていては、これからの時代「やっていけない」ということには変わりありません。
未経験者がこれから目指すなら「Webデザイン」からの「二刀流」
デザイン業界未経験者が、
転職や副業・フリーランスでグラフィックデザインとWebデザインで迷っている場合、
「できるだけ早く収入を得たい」なら、
Webデザイナーを目指す方が無難中の無難です。
今足りないと言われているのは「デジタル人材」です。
仕事がたくさんあるからこそ、それに対応できる人手が足りてないのです。
ざっくりと考えてもWebデザインの仕事の方が多いと言えます。
ですからWebデザインができれば、少なくとも「仕事がない」という事態は避けられます。
それでもグラフィックデザインがやりたいと思えば、
Webデザインの仕事の延長線上でグラフィックデザインも勉強するという「二刀流」が理想です。
今後は「グラフィックデザインもできるWebデザイナー」(もしくはその逆)が重宝されてくるはずです。
グラフィックデザインもできるWebデザイナーを目指す時の注意点
「二刀流」と言っても、、どっちつかずになるのが一番避けたいパターンです。
Webデザインにもグラフィックデザインにもそれぞれ深い世界があり、役割も全く違います。
「デザイン」という点で重なる部分も多くありますが、細かい話をするとデータの作り方の「出だし」からして違うのです。
ですからまずはWebデザインをしっかり習得するようにしましょう。
スキルスクールの中にはWebデザインだけでなく、グラフィックデザインなどの色々なスキルをかけあわせて学べるところもあります。
そういったスクールを利用して両方のスキルを習得するのも一つの手です。
【おまけ】どうしても「印刷物」のグラフィックデザイナー になりたい方へ
ここから先は、どうしても「印刷物」をデザインするグラフィックデザイナーになりたい方向けです。
現在20代社会人・第二新卒の方は、いきなりフリーランスになるのではなくデザイン事務所や会社への就職を目指してください。
IllustratorやPhotoshopのアプリケーションスキルはもちろん必要ですが、
どんなに色んな機能を使いこなせたとしても、スキルはただのスキルでしかありません。
スキルを使って「どう考えてどう表現するか」がグラフィックデザインの本題です。
スクールなどを利用して、できるだけ効率よく基礎的なスキルを学んだら、
ポートフォリに載せられる作品をできるだけたくさん作るようにしましょう。
ポートフォリオの内容は「想定デザイン」で構いません。
(※「想定デザイン」とは「自分だったらこうデザインしたい」というものです)
- どうしてこのデザインをしようと思ったか
- (想定した)分野にはどんなデザインが必要と自分では考えているか
- 完成までの経緯(色やフォントを選んだ理由など)
など「デザインに対する考え方」がわかるようにまとめます。
新卒や第二新卒のデザイナー採用のポイントは、デザインスキルの高さよりも、
「どれだけデザインに夢中になれるか」を第一にみているからです。
また現在中・高生、または進路変更を考えている大学生なら、
まずは美術大学や専門学校でビジュアルデザインを学ぶことを目指してください。
もし進学がむずかしくてもあきらめなくて大丈夫です。
美術館へ足をはこんだり、デザインイベントに参加してみたり、
いつも「デザイン」へのアンテナをはりながら、
好きな雑貨、洋服、お店、食べ物、本、家具、インテリア、建物、国などなど、
興味のある分野にまつわる「グラフィックデザイン」に注目し続けてください。
「好き」を極めて「デザイン」から離れないようにしていれば、必ず「デザイン」にかかわる「場所」にたどり着くはずです。
多摩美術大学 TUBでは、デザイン・アートに関するイベントが開催されていて、
子供から大人まで誰でも参加することができます。
またコンペなどに参加してみると近道になります。
JAGDA国際学生ポスターアワードは学生なら誰でも参加できます。